未来の科学者たちへ

科学者というお仕事

科学者は、人々を幸せにするすばらしいお仕事です。

科学は人々を幸せにしてきました。

科学の発展によって、人々の暮らしはより便利に、豊かになりました。そして科学は、安心、安全な世の中をつくることにも貢献してきました。

その一方で、歴史を振り返ってみると、科学の使い方を間違えたり、ある一面だけにしか目を向けなかったことによって、人々を不幸にしたこともありました。

このように、科学には良い面と悪い面があります。

科学者のお仕事は、科学の良い面をうまく発展させながら、悪い面を無くしていく、2つの大切な役割を担っています。

 

これからの科学者

これからの100年間は、人類がこれまでに経験したことの無い位、科学が急発展する時期を迎えることになるでしょう。それに伴って、世界の産業構造をはじめとした色々な仕組みが短時間で激しく変わっていくことが予想されます。私たちの生活スタイル、働き方も大きく変わるでしょう。

これからの世界は、科学技術をうまく利用できるかできないかで、格差がひろがっていくでしょう。そのため、科学者に対するニーズはさらに高まっていきます企業経営にも、社会政策の決定にも、ますます科学の素養が必要になってくるでしょう。

情報技術や人工知能、ロボット技術の進化によって、生産性が飛躍的に向上し、私たちは生活に必要な物資の生産やサービスの提供の多くを、ロボットや人工知能に任せていく時代がきます。それによって、無くなっていく職業もあるといわれています。しかし、全体でいえば生産性が上がってくるので、生産性向上で得た富を再分配することができれば、世界中の人は豊かになっていくでしょう。

多くの仕事はロボットや人工知能に任せて、人は学問研究や、芸術趣味などに今よりも多くの時間を費やす。そんな時代がくるかもしれません。

そのためには、科学技術だけでなく、社会や経済の仕組みが適正に変化していく必要があります。科学技術が人々を幸せにするためには、各個人が科学の広範な素養を身につけたうえで、より専門な知識を修得するのはもちろんのこと、科学以外の広い知見を身につけることも必要になってきます。科学以外の幅広い教養もしっかりと学んでおきましょう。

 

これから急速に発展する分野

以下の7つの分野が互いに連携しながら、急速に発展していくと予想しています。今後10年以内に下記分野の融合化が進み、新しい科学の分野ができるでしょう。

情報科学分野

インターネットは歴史的に見ればまだ始まったばかりですが、驚くほど私たちの生活を変えており、これからも各分野を巻き込みながら急速に発展することが予想されている分野です。

世界中にインターネット通信網が張り巡らされ、スマートフォンや通信デバイスが、世界中の人やモノ、お金までもインターネットに繋がっていきます。すべてその中で新しいアイデアやサービスがどんどん生み出され私たちの生活をどんどん変えていくでしょう。

 

人工知能(AI)分野

近い将来、深層学習(ディープラーニング)アルゴリズムが実用化レベルまで進化し、いろいろな製品やサービスに活用されるでしょう。これは、インターネットと同様、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。

これまでの人工知能のように、人の示したお手本を真似るのではなく、人工知能自身が自分で学習しながら課題解決の方法を探すアルゴリズムは、近年のコンピューター処理速度の飛躍的な高速化によって実用化への可能性が高くなってきました。

そして、いつか人工知能は人間の知能を超える(シンギュラリティ)ときが来ます。そのときに、人工知能が暴走しないように、また、一部の人間によって悪用されないようにしなければなりません。そのための国際的なルール作り、仕組みづくりが今後課題になってくるでしょう。これらの課題解決には科学者の専門的な知見が必要です。

 

バイオサイエンス分野

生命科学(ライフサイエンス)はiPS細胞の発見で歴史的転換点を迎えました。これによって、ほんの数十年前まではSFの世界の話であった再生医療が、にわかに現実味を帯びてきました。

生物生産関連の分野においても、バイオ技術は重要です。世界人口が増え続ける中、食糧問題を解決する方策としての期待は依然として高まっています。

 

材料科学分野

工業的に生産されるあらゆるものには「材料」が使われており、最先端の材料開発が、多くの工業製品の進化に貢献してきました。近年はナノテクノロジー(極微細技術)という、1ナノメートル(=百万分の1ミリメートル)の小さな単位で材料を制御したナノ材料が一部実用化され、注目されています。

近い将来、ナノ材料はさらに進化し、幅広い工業分野、医療分野などに欠かせない重要な材料になっているでしょう。

 

ロボット科学

先進国の人口減や急速な高齢化進展が、人工知能研究の進化と相まってロボット科学の研究を一層加速させるでしょう。

 

宇宙科学

宇宙へのアクセスが容易になれば、宇宙空間や宇宙エネルギーの利用が急速に進むでしょう。材料科学の進歩により、SFの世界であった軌道エレベーター(宇宙エレベーター)の実現可能性が現実味を帯びてきました。

 

脳と心の科学

 

上記7大分野は、科学と工学が互いに連携しながら、今後100年間で急速に発展して行くと考えています。