会社の生産性を高めるのは誰の仕事?

会社の生産性を高めたり、生産性を高める仕組みを作ったりするのは経営者の重要な仕事です。労働者側に期待しても、生産性はそう高まるものではありません。

最近の日本企業の問題点として、多くの経営者たちは、自分の任期中の業績を維持・向上させることに注力するあまり、将来のことを先送りし、短期的利益追求や現状維持に注力します。

具体的には効率を上げるデジタル化や機械化、高度人材の登用、社員教育、成長分野への仕込みといった将来への投資を渋り、目先の経営数字向上のための人件費削減、提供する製品やサービスの必要以上のコスト削減(合理化)、(将来有望だが現時点では利益を出せていない)安易な事業売却などを優先して推進します。特に雇われ経営者(サラリーマン経営者)にその傾向が多いと感じています。

そのような状況なので今後も生産性向上につながる大きな改革が行われず、企業の競争力がじりじりと低下し、日本経済の停滞がさらに長期化する可能性があります。

 

一方、経営者だけでなく、労働者も会社の生産性向上に貢献することが重要だという意見もあります。

労働者が会社の生産性向上に取り組むことももちろん重要ですが、労働者レベルでの生産性向上は、これまで多くの日本企業が既に長年取り組んできており、そろそろ限界が見えてきています。

というのも諸外国の急速なDX化IT化機械化の前には労働者レベルの生産性向上では到底太刀打ちできない状況です。各人が人的生産性を例え毎年10%上げ続けたとしても(これも凄いことですが…)、海外では最新の生産機械ロボットを導入し、自動化デジタル化を推進することで生産性を一気に数倍以上に高めたりしているのです。

分野によっては、自動化、デジタル化で生産性を10倍、100倍に高めることも不可能ではありません。

そういった革新的な生産性向上の仕組みづくりや自動化、デジタル化への投資は、労働者側ではなく経営者側の仕事で、投資額も大きいため経営者の判断(決断)が必要です。

また、世界の高収益企業では、高度な技術者や研究者発想に富んだアイデアマンから高付加価値のサービスや製品が生み出されているにも関わらず、日本企業ではこれら高度人材を優遇したり、社内で育成するシステムがほとんどありません。むしろ冷遇する企業が多く、社外(国外)流出や、社内での人材埋没が問題となっています。

こうした高度人材に対する人事評価制度や登用制度の適正化も、労働者側でなく経営者側の重要な仕事です。しかしながら、従来の経営者や人事の多くが高度人材を評価・登用できる能力を持ち合わせていないため、(極端な話、相対的に自分達の立場や評価が下がってしまうため)、根本的な改革につながっていません。

経営者は常に勉強し続けることで高度人材と対話できる能力を磨き、成長分野へ積極的に投資判断可能な見識を養い、必要であれば投資家たちに新たな出資を募ったり、政府に働きかけたりして企業の飛躍的な生産性向上を図っていくことが求められています。

しかし多くの経営者がこういった難しい仕事を放棄し、目先の利益を上げるためだけの人件費削減や製品、サービスの質を下げる安易なコストカットの施策を取り、将来的な自社の成長を止めてしまっている状況です。

 

繰り返しますが、会社の生産性を高めるのは経営者の重要な仕事です。そして現在多くの日本企業の生産性が依然として低いままであるのも、経営者の責任といえるでしょう。