今回の新型肺炎の影響で、世界的なマスク不足が懸念されています。
マスクメーカー各社は増産体制をとられていますが、急激な需要に生産が追い付かないようです。特に医療関係者のマスクまで不足しているというのは深刻です。よって、しばらく一般用は入手困難の状況が続くことが予想されます。
わたしは先月末から防災用にストックしておいたマスクを使っていますが、いよいよ残り少なくなってきたので、最後の手段として「サージカルマスクの再利用」を検討中です。
あくまでもマスクが入手できないときの非常手段です。
なぜ、サージカルマスクは使い捨てが原則なのか?
マスクの表面に菌やウイルスが付着するから
同じマスクを使い続けていると、口や顔にウイルスや細菌が付着するのを防ぐ分、マスクの表面にウイルスや菌が蓄積してきます。
表面にウイルスや細菌が大量についたマスクを使い続けるのは、衛生上問題です。
また、無意識にマスクの表面を触ってしまい、その手で口や目を触るとマスクをしていても感染の確率が上がってしまいます。
洗うとマスクの性能が低下するから
もうひとつの理由は、洗うとサージカルマスクの性能が落ちてしまうからです。
静電フィルターの性能低下
サージカルマスクには、静電気を帯びたフィルター(静電フィルター)が内蔵されていて、花粉や細菌、ウイルスなどの微粒子をフィルターで捕捉しやすいようになっています。しかし、静電フィルターは水が付着すると静電気が失われ、微粒子を吸着する性能が低下します。
特に洗剤や柔軟剤などに含まれる界面活性剤や帯電防止剤は、静電気を除去する働きが強く、静電フィルター表面に吸着して長時間残り続けます。
なので、洗剤(特に柔軟剤入り)で洗濯をすると静電フィルターの性能が大きく低下するおそれがあります。
不織布の水はじき性低下
サージカルマスク表面の不織布や内部の静電フィルターは、水をはじきやすい性質があります。この性質のおかげで、くしゃみや咳による唾液のしぶき(飛沫)がはじかれ、マスクのフィルターを通りにくくなっています。
洗剤(界面活性剤)には水をはじく性質を弱める働きがあり、不織布表面に吸着して長時間残り続けます。
では、できるだけ性能を落とさない方法はあるか?
性能が落ちない洗濯方法は残念ながらありませんが、性能の低下を幾分か抑える方法はあると思います。
性能低下をできるだけ防ぎたいのであれば、前述の界面活性剤や柔軟剤が入った洗剤で洗濯するのはやめて、水やぬるま湯の流水で洗うことです(それでも静電フィルターの性能低下は避けられないですが、マスクが無いよりマシです、、、)。
水やぬるま湯だけではウイルスが十分流しきれず残っている可能性があるので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液や消毒用アルコール(エタノールやイソプロパノール)を併用します。できるだけマスクの性能が落ちにくいように、界面活性剤が入っていないものを使います。
具体的なマスクの洗浄方法
具体的にはこんな感じです。
マスクの取り扱いはゴム手袋等を使用し、マスクのゴム部分を持って、マスク表面に触れないようにします。
使用済のマスクは、(マスクが顔や口にウイルスが付着するのを防いでくれる分)マスク表面にウイルスがべっとりと付着している可能性があるので、まず次亜塩素酸ナトリウム水溶液、アルコールなどの消毒液をマスク表面にスプレーし除菌します。
その後、流水(温水)で洗います。除菌の観点からは熱湯が望ましいのですが、温度が高すぎると静電フィルターや不織布が変質します。また取り扱い時にやけどする恐れもあり危険です。このため、洗浄時の湯温は40℃位、高くても50℃以下にします。
流水洗浄後、水気を切ってから再度除菌します。次亜塩素酸水や、消毒用エタノールを用いています。今回は次亜塩素酸水に浸漬しています。
消毒後、十分乾燥させます。
洗浄前後の性能評価
マスク表面の水はじき性評価(水の接触角評価)
マスク外面の不織布や内面の静電フィルターには、飛沫を透過させにくくするために、水をはじきやすくする加工がしています。
水はじき性の評価を行った結果、マスク外面の水はじき性は洗浄前後で大差ありませんでした。
繊維の形状評価
顕微鏡観察では繊維の形状に変化はありませんでした。
静電フィルターの表面電位評価
表面電位計(春日電機製)にて上記洗浄処理した静電フィルターの電位評価を行いました(5/22追記)。
次亜塩素酸洗浄した静電フィルターの表面電位は洗浄後、洗浄前の5割程度まで低下しましたが、よく乾燥させることによって洗浄前の最大7割まで回復しました。
この結果より、使い捨てサージカルマスクは洗浄すると本来の性能は発揮できないものの、しっかり乾燥させることによってある程度は機能を維持できることがわかりました。無いよりは、洗って使った方がマシかもしれませんね。