安藤百福から発明・成功の秘訣を学ぶ

インスタントラーメン発明記念館(カップヌードルミュージアム)

ちょっと前に大阪・池田にある、日清食品インスタントラーメン発明記念館に行ってきた。

そこにある発明小屋で、創業者 安藤百福についていろいろと思いを巡らせていた。安藤百福なら今の日本の状況をどう思い、どう良くしていくだろうかと。

安藤百福の成功は、没頭にあった!?

これはあくまでも私見だが、安藤百福は人の役に立ちたいという崇高なビジョンと使命感を持ち、小屋で研究に「没頭」できたからこそ、世界初のインスタントラーメンを発明できたのではないかと思っている。

わたしは、研究者が良い成果を生み出すには「ビジョン」と「使命感」、そして「没頭」が必要だと思っている。なかでも、「没頭」は、ゼロからイチを生み出すような大きな発明には特に大事だと感じている。

「没頭」できる環境は、日本では年々減ってきている!?

しかしながら、「没頭」できる環境は、年々減ってきているようだ。わたしのような会社組織に属さない人間ならまだしも、今の日本の大学研究者、企業研究者(特に大企業の研究者)は、「没頭」できにくい環境なのではないだろうか。

「これが出来たあかつきに、世界じゅうがこれだけ幸せになる」考えただけでもワクワクするようなビジョンに対し、「使命感」をもって取り組める研究も、「没頭」できる時間が少なくなると、急に成果が出にくくなる。しかし多くの大学や企業では、研究者の雑務は増すばかり。指導、計画、書類作成、説明、連携、人付き合い…それもある程度は必要なのかもしれないが、そればかりやっていたら肝心の成果はなかなか出なくなる。

 

脳内のネットワークは、人と人のネットワークよりも「高次」で「効率的」

組織の中で仕事をするためには、こういった「雑務」は避けては通れないのかもしれない。にしても効率が悪すぎる。人と人が協力して大きな仕事をするといっても、頭の中が完全にコネクトするわけではない。だから初期の段階の研究、発明においては、一人で完結するのが効率が良い場合のほうが多い。没頭して取り組む中で、個人の頭の中に詰まっている様々な知識、経験が総動員され、顕在意識・潜在意識双方で高度に連携し、ひらめき、成功する。

誰にも邪魔されない、ひとりの時間を増やして生産性を上げよう

協力し合って大きな仕事をするというのは、最終的には必要だが、最近の企業では、そればかり奨励されている印象。ひとりで没頭して仕事をする時間が、あまりにも軽視されていないだろうか?一人で仕事をする時間が少ない状況だと、仕事ははかどらない。生産性向上には「没頭」が必要なのである。

研究中に上司や同僚、連携先から容赦なしにSNSやメールが飛んできたり、電話がかかってたり、そのたびに中断し、集中が途切れる。そんな仕事環境では、大したことはできない。わたくしごとだが、雑務を適当に減らして、研究に「没頭」していた頃は、世界的な成果が出ていた。「連携」はその後。最初から連携で始まった研究は、凡庸でそこそこの成果しか出なかった。予想通りの普通の成果しかでなかった。

生き残りには、組織全体の意識改革が必要

多くの組織では、いつできるか保証のない世界的な成果より、そこそこの成果を安定して求められることのほうが多いと思う。でも、そんな普通の成果では、たとえ安定的に出していても世界からどんどん遅れていく。企業も大学も、世界に取り残されてやがてつぶれていく。

企業や大学が生き残るためには、今の延長線上ではない「抜きんでた成果」が必要で、そのためには、多数の人が思い思いに口を挟まないシステムが必要である。

抜きんでた成果は一人の時にでる。会議でみんなが集まってワイワイやっても、結局全員の平均的な見解が尊重され、せっかくのすばらしいアイデアが消されてしまうことがある。だから、そんな見解が入らないところで没頭し、ある程度成果の目途がついてから公表する。そのほうがうまくいく。だが、今の日本の大学、企業では、それができにくい(できない)。

自分の小さな成功体験と安藤百福の世界的な発明を一緒にするなんておこがましいが、ミュージアムの小屋の中であれこれ思いを巡らせていた。安藤百福ならどう考えただろうかと。